相続した土地をいつ売却すればよいのか悩んでいる人は多いのではないでしょうか。売却するタイミングによっては、損をしてしまうこともあるので注意が必要です。
この記事では、相続した土地を売るタイミングについて実例を紹介しながら解説します。ぜひ参考にしてください。
相続した土地に関する実例
まずは実際にあった失敗事例と成功事例を紹介します。失敗パターンと成功パターンを把握しておくことで最適な売却のタイミングを見極めやすくなります。
失敗事例
【失敗事例1】特別控除を受けられなかった
この方は空家の3,000万円特別控除の条件をクリアしていたのですが、適用期限が「相続開始日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日まで」ということを知らなかったため、期限が過ぎてしまい売却時に特別控除が受けられなかったという事例です。
不動産の相続はそう何度もあることではないため、このような制度があるということを知らない方も多くいらっしゃいます。不動産会社に相談すれば、このような専門知識を教えてもらえます。すぐにとは考えていなくても、将来的に「売却」という選択肢がある場合は、不動産会社に行ってアドバイスを受けると良いでしょう。
特別控除に関しては後の項目で詳しく説明します。
【失敗事例2】害獣・害虫駆除にお金がかかった
数ヶ月ぶりに様子を見に行くとハクビシンが巣を作って住みついていた。建物は傷み、駆除にもお金がかかってしまった。
害獣(ハクビシン・テン・イタチ・郊外ではタヌキなど)や害虫(シロアリ・スズメバチ・ゴキブリなど)が巣をつくり、相続した家に住みついていたという事例です。
動物が住み着いた空き家は、資産価値が下がります。糞尿によって建材の老朽化が進み、居住スペースも不衛生になってしまうためです。
悪臭や鳴き声などによって近隣に迷惑をかけることもありますので早急に駆除が必要です。
定期的に管理できないため売りたいと考えるのであれば害獣や害虫の被害が出る前になるべく早く売却した方が良いでしょう。
【失敗事例3】台風で古い建物の一部が飛んでしまった
台風がきた時に瓦や壁が飛んでしまい、近所の家屋や車にあたって弁償することになってしまった。
台風により破損した建物の一部が飛来し、近隣に被害を与え弁償したという事例です。この事例のポイントは建物の老朽化に気付いていながら、放置していたということです。たとえ自然災害でも設置や保存に瑕疵があったと見なされれば損害賠償責任が発生します。
相続した家が古く老朽化が進んでいる場合は、近隣に迷惑をかけることのないように修繕は必須です。また、管理が不十分と見なされると、「特定空家」に指定され、土地の固定資産税が最大で6倍になってしまう可能性があります。
適切に管理できないのであれば、売却を検討すると良いでしょう。
成功事例
【成功事例1】特別控除が受けられた
こちらの方は早めに売却したため、空き家譲渡の3,000万円特別控除が受けられたというケースです。この特別控除を受けるには様々な条件があります。適用期限も設けられており相続開始日から3年経った年の12月31日までに土地の売却をしなければ利用できません。
不動産の売却にあたっては、すぐに買い手が見つかるわけではなく、不動産屋に売却相談をしてから買手が現れて、売却完了までに一定の期間を要します。
したがって、売却に向けて動き出すのが遅いと相続開始の日から3~4年を経過してしまうので、特別控除を受けるためには、できるだけ早めに売却に向けて行動する必要があります。
【成功事例2】売却して現金化することで公平に遺産分割できた
少し負い目もあったが、使う予定もなくいずれは売却するしかなかったので早めに売却して正解だった。
兄弟で土地を相続し、売却して現金化することで公平に遺産分割ができたという事例です。
土地は物理的に分けにくいため、遺産分割方法を巡り兄弟間でトラブルが発生することも珍しくありません。現金ならば、公平に分割することができるため、兄弟からの不満も出にくいのではないでしょうか。
ただし相続した土地を売却して手放さなければならないため、兄弟全員の同意を得る必要があります。
相続した土地を売却したときに生じる税金
相続した土地を売却すると様々な税金が生じます。売却の前にどれほどの金額になるのかを把握し、備えておくとよいでしょう。ここでは相続した土地を売却した場合にかかる税金を紹介します。
登録免許税
不動産を相続した場合は、相続登記を行い、被相続人から相続人へ名義変更を行います。登録免許税とは、この登記手続きの際に国に納める税金のことです。
相続登記は2024年4月に義務化されましたので、必ず必要な手続きとなっています。
「相続登記」の場合、登録免許税の課税額は、次の計算式で求めます。
土地の固定資産税評価額 × 0.4%
※不動産の評価額が100万円以下の土地であれば、免税措置が適用されます(期限:2025年3月31日まで)
印紙税
印紙税とは、文書や契約書に印を押すために必要な「印紙」に課される税金です。
土地の売買契約書は印紙が必要であるため、印紙税は必ず納めなければなりません。
印紙税は売買契約書に記載する売買代金によって変動します。売買代金が高額であるほど、印紙税も高くなります。
売買契約書に記載する売買代金 | 本則税率 | 本軽減税率 |
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え 1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え 5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)
土地の売却では、譲渡所得が生じると税金が発生します。譲渡所得とは土地を売却して出た利益のことです。譲渡所得税は、譲渡所得に対してかかる所得税・住民税・復興特別所得税の総称です。
譲渡所得は、売却する年の1月1日時点において所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、1月1日時点において所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」に分類されます。
長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率は下表の通りです。
区分 | 所得税 | 住民税 |
長期譲渡所得(所有期間5年超) | 15% | 5% |
短期譲渡所得(所有期間5年以下) | 30% | 9% |
復興特別所得税の税率は、所得税に対して2.1%を乗じます。
相続した土地の売却で使える特例
ここでは、相続した土地を売却し、譲渡所得が発生したときに使える特例をご紹介します。
相続税の取得費加算の特例
相続税が発生した土地を売却した場合に、納めた相続税のうち一定金額を譲渡所得算出時の取得費に加算することができる制度です。
売却価格から差し引ける額が増えるので、結果的に譲渡所得税を減らすことができます。
この制度を利用するには、相続の開始から3年10ヶ月以内に売却することが条件です。そのため、早めに土地の売却をする必要があります。
また、相続税を納税していなければ利用できませんので、注意が必要です。
相続空き家の3,000万円特別控除
被相続人が1人で住んでいた家とあわせて土地を売却する場合に、一定の要件を満たすことで譲渡所得から最大3,000万円まで控除される制度です。
この制度は、相続開始日から3年経った年の12月31日までに売却しなければ利用できません。また、旧耐震基準で建てられた家であること、売却時に現行の耐震基準を満たしていること、相続から売却まで空き家であることなど、様々な要件を満たさないと適用されないためハードルは高めです。
なお、「取得費加算の特例」と「相続空き家の3,000万円特別控除」は併用できない点にも留意しましょう。
相続した土地をすぐ売却した方が良い場合
ここでは、相続した土地をすぐに売却した方が良いケースをご紹介します。
相続税の納税資金がない
相続税の納税資金がない場合には、土地をすぐに売ることをおすすめします。
相続税は、相続開始を知った翌日から10ヶ月以内に申告・納税しなければなりません。納税資金がない場合には、土地をすぐに売って現金化し、期限までに納税資金を用意することが必要となります。
また、土地を所有していると、年に一度必ず固定資産税が課されます。加えて、税金だけでなく、土地や物件を維持するための費用も必要です。
金銭面の余裕がないのであれば、土地・物件は売却することをおすすめします。
遺産分割がしにくい
遺産は相続人が相続割合に応じ公平に分割して所有することになります。しかし、土地などの不動産を複数人で相続した場合には分割が難しく相続人間で揉めることも少なくありません。
分割が困難な場合は、土地の売却を検討してみてください。
土地が現金になれば、公平に分割しやすくなりますので、相続人間のトラブルを避けることにつながるでしょう。遺産分割トラブルを複雑化・長期化させないためにも早めの話し合いをおすすめします。
相続した不動産は相続人の共有状態になりますので、売却するには相続人全員の同意が必要です。相続人同士で話し合い、売却するかどうかを検討しましょう。
相続税を納税した
相続税を納税した場合も、すぐに売却した方が良いケースです。
相続税を納めると、相続税申告期限の翌日から3年以内に土地を売却することで、取得費加算の特例が利用できます。売却を考えている方はこの特例を有効活用することをおすすめします。
不動産を売りに出しても、すぐに買い手が見つかるとは限りません。特例を受けるためには、できるだけ早めに売却に向けて行動すると良いでしょう。
活用の予定がない
土地を相続したものの、活用の機会がなく持て余しているという場合も売った方が良いケースです。
土地は所有しているだけで、固定資産税や維持費などのお金がかかります。活用せずに所有したままでいると大きな負担になります。
活用方法がなく不要だと判断したら、できるだけ早めに手放すことが望ましいでしょう。
ここまで、相続した土地をすぐに売却した方が良いケースをご紹介しました。期限がある場合もありますので、できるだけ早めに売却に向けて行動することが重要です。
反対に「相続税が発生しない」「納税資金がある」「遺産分割がすんなりと整う」といった場合には焦って売却せずにじっくり活用方法を考えても良いかもしれません。
土地を相続したら・・・まずはご相談ください!
不動産の相続は何度も経験することではないため、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。売却するタイミングによっては損をしてしまう可能性もありますので、売却という選択肢がある場合は、できるだけお早めにご相談ください。
家族との思い出が詰まった実家、先祖から代々受け継がれてきた土地など、不動産への想いは人それぞれです。受け継いだ大切な土地を売ってしまってもいいのか…と悩まれる方も多くいらっしゃいます。
恒和不動産では思い入れの深い不動産だからこそ、お客様から新たなお客様へと想いを繋いでいきたいと考えております。
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